研究概要 |
地下とう洞内のコンクリート劣化部分を持ち帰り,分析を行った。まず,pHを調べた。健全部分のpHは11〜12であったが,劣化部分では8〜9であった。ナトリウム及びカルシュウムイオンが劣化部分で高くなっていた。三酸化硫黄もかなり高くなっていた。示差熱,熱重量分析による水酸化カルシュウム量及び炭酸カルシュウム量の分析の結果,劣化部のモルタル中からは水酸化カルシュウムは測定されなかった。一方,炭酸カルシュウムはかなりの量存在していた。C-H-Sなど他のセメントの水和物も炭酸化を受けているものと思われる。粉末X線回折では炭酸カルシュウムの高いピークが検出され,そのほとんどはカルサイト型であったが,一部アラゴナイト型のものもあった。今回の調査では,周辺環境中の硫酸イオン濃度が高かったにもかかわらずエトリンガイトおよび二水石膏などが同定できなかった。次に,劣化構造物内の水の分析を行った。カリウムイオンはほとんどの試料で300〜500mg/lであった。ナトリウムイオンは4000〜5000mg/lでかなり高濃度になっていた。カルシュウムイオンは概ね3〜5mg/lでかなり低濃度であった。陰イオンでは塩化物イオン及び硫酸イオンの濃度が高くなっていた。また,構造物内に滞留していた水には炭酸または炭酸水素イオンが多量に含まれていた。一方,構造物内から分離した糸状菌は,ペニチリウムやアスペルギルス属に属する菌であった。バクテリアは多数分離された。なかでも硫化水素を生成する菌が沢山含まれていた。また,硫酸酸化細菌も多数分離された。平成6年度はこれら分離菌をコンクリート中で培養し,コンクリート破壊の機構を調べる予定である。
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