昨年度、コンクリート劣化構造物内から、多数の細菌を分離した。その中には、硫化水素を生成する菌が多数含まれていた。その中でも、特に多量の硫化水素を生成する2種について同定を行った。そのうち1種については、実験途中で生育不能となり同定することはできなかったが、他の1種はグラム陰性で、0.8-1.5X2-3μmのかん菌であった。硝酸塩を還元せず、インドールも生成しない。メチルレッド反応はなく、胞子も形成しない。以上の結果から、Xanthomonas sp.であると同定した。本属種の中には、ペプトンから硫化水素を生成するものがある。なお、本菌のDNAのGC含量は57.5%で、キノンの分子はメナキノンであった。一方、硫黄酸化細菌も同定した。グラム陰性で、細胞形態は1.5-1.8X0.6μmのかん菌、極鞭毛を有し運動性があった。生育可能pHは2-8、生育可能温度は20-43度であった。硫黄化合物の酸化能があり、独立栄養を営む好気性菌であることがわかった。また、DNAのGC含量は68.8%、キノンの分子はユビキノンQ-8であった。以上の結果から、Thiobacillus intermediusとした。つぎに、これらの菌を用いて、モルタルの劣化促進試験を行った。プラスチック製培養容器(シバタ、チルチャーボトル)にモルタル1個を入れ、それが完全に浸漬するように300mlの普通液体培地で満たし、高温高圧滅菌した。硫化水素生成菌のみを接種する単独培養と硫化水素生成菌接種後、9日目に硫黄酸化細菌を接種する混合培養の2種類の培養法で行った。その結果、単独培養でも、混合培養でも培養液中にウルシュウムイオンが溶出してくることがわかった。
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