色素材料を中心とした有機非線形光学材料(2次と3次)のMO法による分子設計と合成、それらの非線形性と化学構造の関係について基礎的研究を行った。そして、色素固体の光物性は集合体での機能であるため、色素集合体の高次構造によって物性が大きく異なることを見い出した。すなわち、色素単結晶のX線構造解析から集合体レベルでの分子のスタッキングを解析し、分子構造と光物性の相関性を確立することを試みた。そして、色素分子間でのπ-π相互作用によって分子が3次元的に自己集積化するキノン系色素を新規に見い出した。これらの色素は分子内CT型発色系をもつナフトキノンおよびベンゾキノン誘導体であり、これらの色素は薄膜上で吸収スペクトルが溶液中に比べ100nm以上も長波長シフトすること、3次の非線形感受率χ^<(3)>が、薄膜上で通常の対応する色素に比べ 2桁以上も大きくなることを見い出した。すなわち、色素分子が3次元的なスタッキング構造をとり、色素の分子間距離が3.3-3.4Aになるとπ-平面間で強いπ-π相互作用がおこり、結果的にχ^<(3)>が大幅に向上するとの知見を得た。このように単一色素分子間での3次元的なπ-π相互作用を利用して材料を構築すると、有機非線形光学材料に最も有効な全π電子系で分子から材料を構築することができ、目的とする大きなχ^<(3)>の材料が得られるとの知見を得た。この種の方法論による研究成果は国内外を通じて知られていない。 以上の研究成果を、フランス、ドイツと日本の関連国際学会や、国内の学会で発表し、著書4編(内英文1編)、原著論文(6報、英文)、総説、解説5報(邦文)として公表した。
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