研究概要 |
半導体酸化チタン(IV)はバンドギャップエネルギー以上の光の吸収で伝導帯準位の励起電子と価電子帯準位の電子ホールを生じる。白金を担持し光励起した酸化チタン(IV)の水またはエタノール懸濁液は電子ホールによる水またはエタノールの酸化と白金上で励起電子による水素発生をおこすということが知られている。この光触媒水素発生を利用するテルペン化合物の還元反応の選択性を研究した。 酸化チタン(IV)粉末は日本アエロジル社P25(比表面積50m^2g^<-1>;結晶組成80%アナタ-ス、20%ルチル)を用いた。白金の担持はヘキサクロロ白金(IV)酸六水和物のホルマリン溶液を使用する光折出法を採用した。酸化チタンを励起する光源は500W高圧水銀灯を用いた。反応物の分析はGC,IR,NMRを用いた。 水に懸濁した白金担持酸化チタン(IV)の光触媒反応でリナロール(3,7-ジメチル-1,6-オクタジエン-3-オール)から1,2-ジヒドロリナロールが高選択的に生成することが明らかになった。エタノールを溶媒に用いても1,2-ジヒドロリナロールが高選択的に得られた。さらに反応を続けた最終生成物はテトラヒドロリナロールであった。次に示すテルペンおよびその関連化合物の反応でも選択的水素化を観測した。酢酸リナロール、3,7-ジメチル-1,6-オクタジエン、2-メチル-3-ブテン-2-オール、ネロリドール(3,7,11-トリメチル-1,6,10-ドデカトリエン-3-オール)、4,8-ジメチル-1,7-ノナジエン-4-オール、3-メチル-1,6-ヘプタジエン-3-オール、ゲラニオール(3,7-ジメチル-2,6-オクタジエン-1-オール)、シトロネロール(3,7-ジメチル-6-オクテン-1-オール)、4,8-ジメチル-2,7-ノナジエン-4-オール、6-アセトキシ-3,7-ジメチル-1,7-オクタジエン-3-オールなどである。さらにリノール酸(シス-9-シス-12-オクタデカジエン酸)の水素化も明らかにした。
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