粒径約10nmのチタン酸バリウム粒子に界面活性剤を被覆して絶縁油中に分散させると、粒子が沈降しない安定なコロイド溶液(誘電流体)となる。この流体をITO透明電導性薄膜を被覆した2枚のガラス電極間にスペーサを用いて挟み、薄膜とし、薄膜と垂直方向に可視光を入射し、交流あるいは直流電圧の印加、無印加による透過率を観察した。薄膜は電界を作用させない場合は光を透過するが、電界を作用させると大きな散乱が生じ光を透過しにくくなる性質を有した。これは、薄膜に電界を作用させると、電界方向に粒子が集合して多数の幅のある細長いクラスタを生じ、みかけ上粒径が大となり、レイリー散乱の式から明らかなように光は散乱し、薄膜は光を透過しにくくなるからと考えられる。0.4kV/mmまでは透過率は印加電圧にほぼ比例して減少した。また、波長の短い光ほど著しく散乱され、波長が低下するにつれて透過率は低下した。電界を作用させてから光の透過率が減少し一定となるまでの応答時間に対する液体の粘度の影響を、電界強度を変化させてオシロスコープにて測定すると、応答速度は電界強度が上昇するにつれて速くなった。また、応答速度は溶媒の粘度に著しく影響を受け、例えば、ケロシンベース(0.006Pas)ではアルキルナフタレンベース(0.065Pas)に比べ、応答速度は約10倍速くなった。ケロシンベースでは応答時間は5kV/mmの電界で約2msであった。一方、薄膜に電界を作用させてから、作用させない状態の透過率まで回復する時間は拡散の式より粘度にほぼ比例し、ケロシンベースでは約0.5s、アルキルナフタレンベースでは約5sであった。 そこでチタン酸バリウム誘電流体に少量の磁性流体を混合して磁性誘電流体(あるいは磁性ER流体とも考えられる)とし、磁界を電界と異なる方向に作用させることにより、電界をoffにしてからの回復速度を早めることができた。
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