主要な永年性作物であるバラ科果樹およびチャ樹について、その自家不和合性遺伝子型の同定には長年月を要する。しかし、最近われわれは、ナシの自家不和合性遺伝子に対応する雌ずいタンパク質が、RNaseであることを同定した。この成果に基づいて、平成5年度には花柱のタンパク質の分析により、バラ科果樹およびチャ樹などの自家不和合性遺伝子型の同定を試み、次の結果を得た。 (1)ナシの自家不和合性遺伝子型に対するRNaseの多型性を検出し、その抗体を作成した。またこのタンパク質のN末端のアミノ酸配列を決定した。それらは、ナス科植物のペチュニアの自家不和合性タンパク質と50%の相同性を示した。しかし、花粉におけるRNAの抽出・検出はできなかった。 (2)リンゴについては、5組合せの品種間不和合性に対応する花柱タンパク質の自家不和合性に対応するタンパク質の同定を試みた。これにより、リンゴにおいて、7種類の対立遺伝子を同定した。またこのタンパク質のN末端のアミノ酸配列を決定した。世界中でリンゴの自家不和合性遺伝子型は従来分析されていなかった。従来法では、長年月を要するところであるが、一年で遺伝子分析ができたことは成果である。 (3)チャ樹についても自家不和合性遺伝子型が埼玉県茶業試験場の長年の研究で明らかにされてきた。その協力を得て既知の遺伝子型に対応する雌ずい内タンパク質の同定を試みたが、自家不和合性に対応するタンパク質は同定されなかった。
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