近年植物の自家不和合性の研究が、生化学的及び分子遺伝学的レベルで急速に進展している。われわれはすでに、微量のタンパク質の分析技術を応用して、ナシの自家不和合性遺伝子に対応するタンパク質がRNaseであることを同定した。これは、経済植物の自家不和合性に関する成果として世界的に注目された(平成3-4年の科学研究費補助金による)。 この研究を基礎として、平成5年には、花柱タンパク質の電気泳動によりリンゴの自家不和合性遺伝子型の判定を試みた。その結果、従来遺伝子型が不明であったリンゴの自家不和合性に関して、10品種以上の遺伝子型が明らかになった。 平成6年度には中国ナシおよび洋ナシもとりあげ、洋ナシに花柱でのRNase発現が欠失した自家和合性品種があることを見出した。 また、本研究から派生した研究グループにより、リンゴ品種フジのS-RNaseのcDNAの塩基配列から明らかにされた。 以上の成果により、今後主要果樹類を含むバラ科植物の自家不和合性の研究は急速に進むものと期待される。 なお、チヤ樹の自家不和合性の遺伝子の同様の分析は進展しなかった。調査及び予備的な実験の結果、研究が困難である理由が明らかになったので、次年度以降改めてこの問題に取り組む計画である。
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