昨年度の研究よりハスモンヨトウ5令幼虫へのクロルフルアズロン(CF)処理による、精巣発育の阻害、精子束数の減少、精子移動能の減少、等が明らかとなった。本年度は、これらの現象がCFが昆虫のいかなる代謝系に影響して起こっているかを調べた。(1)精巣、精巣とvas diference、及び雌受精嚢中のDNA量を調べたが、CF処理区では、無処理区に比べて有意に減少しており、有核精子数の減少と高い相関が見られた。(2)精巣の発育はエクジステロイドの影響を受けると考えられているが、5令OHにCF処理した雄では、6令3日からエクジステロイド量が対照区と比べ有意に減少し、精巣体積の減少と同様な結果を示した。従って、CF処理によりエクジステロイドが減少し、その結果精巣及び精子形成が影響を受けたものと考えれた。(3)5令0日の幼虫にCFを処理し、その後処理雌との交尾において、処理雄成虫から渡される有核精子束数は約1/3に減少しており、孵化率の低下と高い相関がみられた。また、この精子移送量の低下は、無核精子束数の減少によると考えられた。今後は、精巣エクジステロイド量の増減にCFがどのように関わっているか、更に詳細な研究を進める必要があると考えられた。また、エクジステロイドとCFとの関連を調べることにより、CF脱皮・変態阻害作用の機構についても解明できるのではないかと考えられた。
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