前年度調製した放射性標識ペプチドはアワヨトウ幼虫の真皮あるいはカイコフェロモン腺の膜画分との結合実験において、結合はしたものの非特異的な結合が多く、以降の解析に支障をきたした。そこで本年度は新たに非放射性標識ペプチドを調製するとともに、ホルモンの受容体との結合に伴って引き起こされるシグナル伝達を解析した。 1.PBANのC末端ペプチドTKYFSPRLアミドを合成した後、N末端アミノ基にスペーサーを介してビオチンアミドを、リジンの側鎖のアミノ基にスペーサーを介してアジドニトロフェニルアミノ基を導入した非放射性のFXPRLアミド受容体プローブを調製した。このプローブはN末端にアビジン結合部位、リジン残基に架橋部位、C末端に受容体結合部位を持つmulti-functionalなリガンドであり、かつ、元の生物活性を保持していた。そこで、カイコフェロモン腺から受容体を可溶化し、プローブと結合させた後、365nmの光照射でリガンド-受容体複合体を形成させた。この複合体を電気泳動ゲル上でアビジン-パーオキシダーゼとアフィニティー結合させ、ケミルミネッセンスで検出したところ、プローブに結合した受容体の特異的なバンドが認められた。現在、このバンドのアミノ酸配列決定を試みている。 2.ホルモンの受容体との結合に伴って引き起こされるシグナル伝達を生化学試薬を用いて検討したところ、フェロモンの生合成は細胞外のカルシウムイオンの流入、カルモジュリン、ホスホプロテインホスファターゼを介してアシルCoAレダクターゼに伝えられることが示唆された。
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