FXPRLアミド配列を持つ昆虫神経ホルモンの受容体を解析するために、プローブとなるリガンドの調整を行った。トリチウムおよびヨウ素を用いた放射性プローブは体色黒化赤化ホルモン(MRCH)、フェロモン生合成活性化神経ペプチド(PBAN)受容体と結合はしたものの非特異的な結合が多く、以降の解析が不可能であった。そこで、新たにPBANのC末端ペプチドTKYFSPRLアミドを出発物としてN端末にアビジン結合部位、リジン残基に架橋部位、C末端に受容体結合部位を持つmulti-functionalな非放射性のFXPRLアミド受容体プローブをデザインし、合成した。このプローブは元の生物活性を保持しており、カイコフェロモン腺から可溶化したPBAN受容体と共有結合で架橋することにより安定なリガンド-受容体複合体を形成し、アビジン-パーオキシダーゼによるルミノールの酸化で発するケミルミネッセンスによりPBAN受容体を感度良く検出することができた。この方法を用い、PBAN受容体を電気泳動により精製した。 また、ホルモンの受容体との結合に伴って引き起こされるシグナル伝達を生化学試薬を用いて検討した結果、ペプチドホルモンのシグナルは細胞膜の受容体に伝えられた後、カルシウムイオンチャンネルの開口→カルシウム-カルモジュリン複合体の形成→プロテインホスファターゼの活性化→アシルCoAレダクターゼの活性化、という細胞内情報伝達系を介してフェロモン生合成系に伝えられ、その最終過程が促進されることが示唆された。
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