1.ソラマメの子実が褐変するいわゆる「シミ症」について、カルシウム欠乏の可能性が考えられるため、カルシウム欠除がフェノール代謝に及ぼす影響について検討した。 ソラマメを、開花期から25日から60日開、培養液のカルシウム濃度について、高カルシウム区(Ca160ppm)と低カルシウム区(Ca 5ppm)とに分けて水耕栽培し、収穫後、莢について、メタノール可溶部とメタノール不溶部(細胞壁部)とに分けて、カフェー酸、p-クマル酸、フェルラ酸、シナピン酸を高速液体クロマトグラフィーによって分析した。 フェノール酸の大部分は細胞壁に結合しない形で存在し、カフェー酸、p-クマル酸、フェルラ酸、シナピン酸の全てについて、低カルシウム区の含有率が高カルシウム区よりも高かった。 2.同様に処理したソラマメの莢のクロロゲン酸を、高速液体クロマトグラフィーによつて分析を行った結果は、フェノール酸と同様に、クロロゲン酸含有率も低カルシウム区のほうが高カルシウム区よりも高かった。 3.現地でシミ症の生じたシラマメの莢について、フェノール酸を分析した結果、シミ症生じた莢のフェノール酸含有率は、健全のものよりも高かった。 ソラマメを、培養液のカルシウム濃度について、高カルシウム区と、低カルシウム区とに分け、さらにラジオトープ^<45>Caを加えて水耕栽培し、収穫後地上部を茎、葉、莢、種子とに分けて放射能を測定した結果、結実期にはいづれの区も種子への分布がもっとも低かった。 ソラマメのシミ症はカルシウム欠乏によるフェノール代謝の異常と推測される。
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