チオシアンはコークス製造時の廃液に多量に含まれ、これはCODの原因物質であることから微生物による処理が広く行われている。このチオシアンを単一エネルギー源として利用する事の出来るイオウ酸化細菌Thiobacillus thioparusはチオシアンを硫化カルボニルとアンモニアに加水分解する酵素を細胞内に持つ。本酵素蛋白質はチオシアンを生育基質とした時にのみ合成され、チオ硫酸ではその合成が抑制される誘導酵素であり、また精製された酵素蛋白質はシアン化物によって強く活性阻害を受ける。両物質ともチオシアンを処理する活性汚泥中には廃水成分として高濃度に存在することから、本研究平成5年度においてはこれらの物質が菌体内のチオシアン分解酵素の誘導や酵素活性に与える影響を中心に調べた。 1.T.thioparusのwhole cell系では、チオ硫酸の添加によりチオシアン分解はただちに停止した。免疫学的解析により、菌体内の本酵素蛋白のレベルが低下することが明かとなり、その結果チオシアンの分解が阻害を受けることが示唆された。チオ硫酸は精製酵素標品に対しては阻害作用を全く示さないことから、本酵素蛋白質の合成反応における何らかの関与が予想された。 尚、本研究平成5年度において申請した超音波破砕機は、予定通り購入されT.thioparusの細胞破砕液の調整に使用されている。 2.チオシアン加水分解酵素の精製酵素標品に対する各種阻害剤の影響を検討したところヒドロキシアミンによっても阻害効果がみられる事が明かとなった。この結果、本酵素の活性発現にはカルボニル基が重要な役割をもつ事が示唆された。
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