本研究は、今日世界の熱帯地域に普及しているタウンヤ法が、どのような社会経済的条件のもとに成立しているのかを明らかにすることを目的としている。 そこでまずタウンヤ法の定義を林地における農業間作を伴う造林法とした上で標準モデルを想定し、造林実行主体(以下国有林)と造林労働者(以下タウンヤ農民)との間で取り引きされるものを概念的に明らかにした。そして他の造林システムと比較した際のタウンヤ法の特色は、タウンヤ農民が農業間作部分に対して国有林側に支払うべき借地料と、国有林側が造林労働に対してタウンヤ農民に支払うべき労賃との相殺にあるとみなした。 次に各地でタウンヤ法と称されている造林システムの事例をもとに、(1)労賃支払い型(借地料が労賃を下回るため、国有林側がタウンヤ農民に対しその差額を支払わなければならないもの)、(2)完全相殺型(両者が相殺されることによって、農民は一見ただ働きをしているようにみえるもの)、(3)借地型(借地料が労賃を上回るため、タウンヤ農民の方が造林労働を行いつつ、さらに借地料の不足分を国有林に支払う)の3者に分類した。その結果、すべて(1)および(2)型となり、(3)型はみられなかったものの、従来(2)型であったナイジェリアでは土地不足から(3)型を検討し始めていた。さらに国有林型にとって節約効果の少ない(1)型が実際には広く普及している要因を、植民地期ビルマの事例を中心に検討した結果、焼畑耕作民の統制という効果がみられることが明らかになった。こうした外部経済効果をどのように評価するかは、今後検討すべき課題として残された。
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