(1)OA古紙の乾式離解処理の検討 PPC古紙に印字されているトナーインキは、従来の湿式脱インキ法によって脱離しにくく、脱インキ後のパルプ中に大きな形状のインキ粒子が残存する。そこで、古紙を乾燥状態のまま機械的に破砕してパルプ単繊維からなる綿状にし、インキ粒子を微細化することによって、これを原料として製造された紙において視覚的にインキ粒子を認識しにくい状態にすることを検討した。その結果、手すきシート中のトナーインキ粒子は、乾式離解処理によって著しく微細化され、湿式離解の場合に認められる最大粒子径200μm程度のインキ粒子が乾式処理によって減少し、最大径40μm程度の粒子にまで微細化することが判明した。一般に、肉眼の解像限界が35μm程度と言われていることから、このような微粒子は斑点として認められなかった。 (2)パルプ繊維へのトナーインキの定着と剥離機構の解明 モデル実験により紙表面に対するトナーの定着強さを測定するとともに、二液法による接触角の測定から紙の表面自由エネルギーを算出し、両者の関係について検討した。その結果、アルキルケテンダイマーを内添した紙シートに対するトナーの定着強さは、紙の表面自由エネルギー、特にその分散力成分の変化によく対応していた。 また、PPC古紙の脱インキとして酵素アルカリ処理を行った場合、70℃の条件ではトナーの表面自由エネルギーが小さくなる傾向が認められ、特にその分散力成分の小さな値を示した。ニーダー処理を行わないときのフローテーション後の重量脱インキ率は、それぞれのトナーの表面自由エネルギーの結果とよく対応していた。
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