7年度は基礎的な選択性理論の構築を完成するため、追実験を行った。釣針が魚の口腔から出ていく過程における、針がかりに関係する釣針の動きを計測することができないため、釣針が魚の口腔に入る過程に集中して分析を進めた。 餌付き釣針の口腔への入りやすさについて餌の大きさの影響を明らかにするため、口腔模型を用いて吸い込み実験を行った。袖形7号釣針を使用し、円柱形に形抜きした6種類の大きさの練餌を針先につけた。口腔模型の水流の発生には小さな空気室の負圧を利用し、その空気室内の水位の調節によって流速と流量を同一に設定した。口腔模型の中に吸い込まれ、移動する餌付き釣針の動きを高速シャッタービデオカメラで撮影し、画像解析装置を用いて、時間経過に伴う口腔模型内の流速と釣針の位置を計測処理した。その結果、餌が大きくなるほど餌付き釣針は口腔模型の奥まで吸い込まれ、口腔模型に入りやすいといえた。 袖形とは形状の異なるヤマメ形釣針を使用し、釣針の大きさの影響について分析した。この釣針は実験魚としたサクラマスに適した釣針として市販されており、これまでの袖形に比較して針先だけが長くなっている。釣針の大きさは4、5、6、8、10号とした。釣られた経験のない全長約14cmの実験魚を1回の実験に100尾使用し、容水量1.5tの実験水槽に入れた。同一釣手1人が釣針1本をつけた竿で順次魚を釣り上げて別の水槽に移した。100試行目までに釣獲した回数と試行回数との比を釣獲確率として求めた。その結果、実験魚の大きさに適した釣針の大きさは5号であった。ヤマメ形釣針のモデルの係数は袖形とは値が異なった。
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