研究概要 |
理論的な解析によって漁獲選択性曲線を推定することができれば,これまでの漁獲試験結果から帰納的に求めた漁獲選択性曲線と相互に補うことによって,より信頼性の高い漁獲選択性を求めることができるものと考えられる。本研究では,対象魚の大きさや行動,釣針などの主要な漁具要素の特性がどのようにこの釣獲現象に影響し,選択性に関連しているのかを明らかにし,基礎的な漁獲選択性理論を構築する。 1)口腔模型内への釣針の進入過程は基本的には釣針や餌の流体抵抗力の働きによって生じる。このため、口腔に入った釣針は大きな釣針、餌ほど最大進入距離は長くなった。口腔に入る比率を示す進入率は大きな釣針ほど小さくなり、進入率を考慮すると平均的には最大進入距離は大きな釣針、餌ほど短くなることがわかった。 2)釣針の形状は進入過程での釣針の姿勢に影響する。その結果,最大進入距離に影響が現れた。長型釣針では釣針のクキが口腔模型入口上部に接触するか,しないかで大きく最大進入距離が異なってくる。丸型釣針ではクキの接触の影響は極端には現れない。また、進入時の姿勢が安定しており、上を向いた針先が口腔模型内壁上部に接触し、針がかりに有利に働いた。 3)釣獲実験よって得た入り難さ係数からは魚の大きさに対して適切な餌の大きさがあることが示された。餌の大きさは入り難さ係数に強く関係していると考えられた。しかし,線形関係といった単純な関係ではないので,モデル化は困難であった。 4)釣針進入限界を定めることにより、釣獲確率モデルの釣獲現象への適合範囲を広くすることができた。釣針進入限界と魚の口腔、釣針、餌の大きさや形状との関係については今後の課題である。
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