本研究の目的は、資源経済学において用いられている質的反応モデルについて、広範囲に適応できる分析手順の構築である。したがって、質問票の様式によってどのような偏りを持つのかを明らかにすることが重要な課題となっている。 中間年度である本年度は、初年度の調査で得られたデータと別の様式で、特に、支払意志額:WTPの問いかけを二肢選択で作成し、郵送および直接対話式で配布して回答してもらった。調査者が予め溜池保全のための支払への評価額を何種類か用意しておき、その内の1つの評価額だけを無作為に回答者に提示し、回答者からはその評価額に対する支払意志をYes/Noに二肢選択で答えてもらう。利点として、(1)回答者にとって精神的負担が軽いために回答率が高くなり、(2)配布のしかたとして、行政や自治体の関係者を通さずに郵送することで、調査者による回答者への影響がない。(3)最大WTPを越える金額にはNoという回答が得られるので、最大WTPが推定できる。得られたデータを質的モデルのMultinominal Logit Modelを用い、二肢選択コンティンジェント評価問題として住民の平均WTPを推定した。昨年の平均WTPと比較して、回答者の回答にあたっての戦略的バイヤスが回避でき、より効率的な推定ができたものと推察される。 また、昨年度のデータを用いて、計測モデル特定化の良い悪しについての診断検定を新たなプロシジャーにより行った。 秋の地域農林経済学会にて、「都市近郊における溜池のもつ環境便益の経済評価-CVMによる住民意向評価-」と題して個別報告を行った。
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