本研究で対象とするフロッキュレートした懸濁浮遊物質の水理学的素過程は、流れ場におけるフロックの形成過程と形成されたフロックの破壊過程である。両者の測定は同一の実験系で可能であるが実験を実施するためには、(1)コロイド試料の調整とそれを用いてフロックの構造の同定、および(2)人為的にコントロールされた流れ場の作成と可視化手法による測定系の開発が必要となる。 研究の初年度にあたる本年度はこの両者について、実験手法の開発が行われた。 まず、(1)については独自に合成した標準コロイド球粒子を用いてフロックを形成し、粒子の界面化学的性質の同定は電子顕微鏡と電子泳動法が併用された。フロックの同定には独自に開発された超音波分散法を適用され、その精度の信頼性の向上が計られると同時に、フロックの拡大撮影図に画像解析を適用した同定法の開発に着手した。 一方、(2)については筑波大学工作センターの協力により、向流型の回転二重円筒が製作され、コンピューターからの広範囲に渡るズリ速度の制御が可能になりつつある。 精度の高い実験は画像解析が可能となる可視化系が装置に組み込まれた段階で、実施する予定にしているが、既に得られたデータをもとに予備的に行われた考察ではフロック形成の際の素過程として、2つのコロイド粒子が衝突する時に働く流体力学的相互作用の重要性と、剪断流中でフロックが形成される際のクラスターの再配列機構の存在が予測された。
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