本研究で対象とするフロッキュレートした懸濁浮遊物質の水理学的素過程は、流れ場におけるフロックの形成過程と形成されたフロックの破壊過程である。 本年度はこの両者について、理論ならびに基準となる急速凝集系における実験系を対象とした測定を行った。結果は以下のとおりである。 (1)フロックの形成過程における理論的考察 コロイドサイズの大きさの粒子は媒体の運動及びブラウン運動により相対的速度差を生じ、順次衝突し凝集する。しかし、この両者が同じ程度で影響しあう領域についての考察はこれまでなかった。そこで、この両者の単純な加算性を仮定して検討してみたところ、既応に報告されている摂動法理論よりも実用レベルに則した結果を予測した。 (2)基準撹拌系における凝集速度の測定 (1)の結果は基準撹拌系における凝集速度の粒径依存性から立証される。その為に必要となる転倒撹拌、回転二重円筒、タービン型撹拌の3つの流動系を製作し、予備実験を実施した。しかしながら、採用された測定系には特に粒径の小さい領域において、大きなノイズが存在し、その改善が次年度以後の課題として残された。 (3)基準撹拌系におけるフロックの破壊 フロックの強度を測定する理論式を導き、基準撹拌系において、その実証を試みた。その結果、既応の報告よりもかなり改善された実測値を得たが、理論との一致において特にフロックの幾何学的特徴との対応を見た場合に、まだ検討されていない点があることが明らかになった。
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