本年度はフロッキュレートした懸濁浮遊物質の水理学的素過程として(1)流れ場とブラウン運動が共存する場におけるフロックの形成過程、(2)形成されたフロックの静水中における単一フロックの沈降特性及び、(3)フロッキュレートした懸濁液の粘度の解析を実施した。得られた主な成果は以下の通りである。 (1)ブラウン運動と流れ場の作用の加算性を仮定した、凝集速度理論の実施を行う為に、基準攪拌系における凝集速度を測定した。得られた結果より、実用的なレベルにおいて両者の加算性が妥当な近似であることが明らかにされた。また、同一の攪拌系を用いて架橋凝集の動的解析を試みた所、溶存状態の高分子が凝集のダイナミックスに深く関与していることが判明した。 (2)基準攪拌系で形成されたフロックを単一状態で取り出し、その沈降速度をフロック径の関数として測定した。測定結果はコンピュータシミュレーションによるフロックの構造に関するスケーリング則の予測と一致し、丹保らによって報告された実測値には定量的な問題があることが明らかにされた。 (3)2:1型粘土鉱物の代表であるモンモリロナイトを水中に懸濁させ分散液を作成しNaCl溶液で精製した後急速凝集を行い粘度を測定した。測定結果より、フロックの強度は懸濁液の粘度に対し支配的な因子である事、ならびに、粘土表面の水の状態がフロック破壊強度を介して懸濁液の輸送特性に深く係わっていることが明らかにされた。
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