フロッキュレートした懸濁物質の輸送特性は水処理における固液分離操作を始め様々な方面から研究されて来たが、既往の報告では粒子の界面化学的な性質とフロッキュレートした系の水理学的条件の関係が明確にされていないためその理論的な解明が殆ど行われていない。本研究ではフロッキュレーションの立場より界面化学的な性質を明確に出来るコロイド試料用いてフロックを作り、これを水理学的に十分コントロールされた流れ場で構成される実験系に適用する事により、解析の基本となるようフロックの形成過程、形成されたフロックの静水中における単一沈降特性及びフロッキュレートした懸濁液の流動に関する水理学的素過程をコロイド粒子の界面化学的性質及びフロックの構造に照らし合わせて解析した。その結果以下の事が明らかにされた。 (1)ブラウン運動と流れ場の作用の加算性を仮定し、急速凝集系における球コロイドの凝集速度を解析した所、実用的なレベルにおいて両者の加算性は妥当な近似であることが示された。また、測定された凝集速度によって流体の攪拌状態が基準化された。 (2)基準化された攪拌系を用いて、架橋凝集の評価をした所、溶存状態の高分子がフロック形成に深く関与していることが明らかにされた。 (3)形成されたフロックを単一状態で取り出し、その静水中における沈降速度をフロック径の関数として測定した。測定結果はコンピュータシミュレーションによる測定を裏付け、既応に報告されている実測値には定量的な問題があることが明らかにされた。 (4)Na型粘土懸濁液を急速凝集させ、その粘度を希薄な状態で解析した。その結果、粘土表面の吸着水の状態がフロックの破壊強度を介し、懸濁液の輸送特性に密接に関係していることが明らかにされた。
|