今年度に行った研究によって得られた新たな知見は、以下の通りである。 1.ウズラの中卵胞に由来する顆粒膜細胞を本研究代表者等が開発した方法によって培養したところ、FSHに反応して最大卵胞の顆粒膜細胞のように分化した、つまりプロゲステロンを産生分泌できるようになった。しかしこのような卵胞は生体内ではFSHには反応しないと考えられている。そこでEGFによってFSHのシグナル伝達機構の一部が抑制的に制御されるであろうと考え、培養中に蛋白キナーゼCの阻害剤や賦活化剤を添加してFSHの反応性の変化を調べた。その結果、蛋白キナーゼCの活性の変化を観察することができた。 2.顆粒膜細胞におけるFSHとLHの細胞内シグナル伝達は、両者ともサイクリックAMP-蛋白キナーゼA系であると考えられているが、p34^<cdc2>のリン酸化-脱リン酸化反応を測定すると、FSHとLHではリン酸化の程度が異なるという知見を得た。 これらの成果は本研究の前段階としての予備的実験を多く含んでおり、新しい発見は少なかったが、平成6年度に向けての基礎的知見ならびに実験方法を確立したことになる。ただし、培養中の顆粒膜細胞の細胞周期の同期化が難しいため、p34^<cdc2>のリン酸化-脱リン酸化反応に明瞭な周期性が現れない点が問題点として残されており、培養方法の再検討も必要と思われる。
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