今年度におこなった研究によって得られた新たな知見は、以下の通りである。 (1)ウズラの顆粒膜細胞の単層培養系は、前年度までに本研究代表者によって確立された。今年度はこの方法を用いて、EGFとIGFの細胞分裂促進作用、およびFSHの細胞分化作用に焦点を絞り研究を進めてきたが、特に細胞成長因子による細胞分裂の促進とFSHによる細胞の機能分化の相互関係が明らかになった。すなわち、FSHを添加した培養液で72時間培養しても細胞の増殖には効果は認められなかったが、LHに対する反応性は卵胞の大きさとは無関係に増加した。これは培養液中に放出されるプロゲステロンの濃度を測定することによって調べた。一方、EGFを添加すると細胞の著しい増殖が観察されたが、これらの細胞ではLHに対する反応性が消失し、プロゲステロンの産生が認められなかった。 (2)このような変化にかかわるシグナル伝達は、従来のサイクリックAMP-蛋白キナーゼ経路だけでは説明することができない。どのような蛋白キナーゼが関与しているかを明らかにするために、p34^<cdc2>のリン酸化-脱リン酸化の状態を、PSTAIR抗体およびフォスフォチロシン抗体を用いた酵素免疫反応によって検出する方法を試みたが、本研究の対象としているウズラ卵胞の培養顆粒膜細胞では現在のところ検出できるには至らなかった。
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