日本鶏のうち特に地鶏を中心としてこれに小国、大シャモ、蜀鶏を加えて、これらの間の類縁関係を、RAPD法により調べた。供試羽数は各品種とも任意に選んだ7〜10羽である。RAPDのプライマーはGC%が80%とし、その塩基配列は5'-CGCCCGTGT-3'である。DNA増幅装置はQuick Thermo Personal(Nippon genetics)を用い、PCRの反応条件は95℃3分間予備加熱後、ポリメラーゼを加えて、93℃30秒、36℃1分、72℃2分を45回反復し、最後に72℃5分で終了させた。この反応溶液にはTthポリメラーゼ1ml(1U)、10x Tth用緩衝液10ml、dNTP mix 2ml(100mmol)、サンプルDNA1ml(180mg)、プライマー1ml、純水86mlを含む。 PCR産物をアガロースゲル電気泳動すると、7本のバンドに変異が見られた。これらのバンドの有無は品種によりかなり異なっていた。各々のバンドにつき、在るほうが無いほうに対して優性に遺伝すると仮定して、各品種における各バンドの遺伝子頻度を求めた。そしてこの頻度の差からRogerの方法により各品種間の遺伝的距離を求め、UPG法によりデンドログラムを描いた。比内鶏、大シャモ、岩手地鶏と土佐地鶏はいずれも遺伝的に近かった。次に、蜀鶏、岐阜地鶏がこれらと近い関係にあった。薩摩鶏、対馬地鶏はこれらとはかなり遠い関係にあった。これらから、同じ地鶏と言っても産地により遺伝変異が大きく、これらの間で遺伝的分化が生じていることが示唆された。薩摩鶏は薩摩地方にいた大地鶏を改良したとされているが、冠の形から大シャモの混血が推察されている。しかし、本研究結果からは大シャモとはかなり遠い関係であることが示された。比内鶏は比内地方にいた大地鶏にシャモを交配したとされており、本研究でもこれが裏付けられた。
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