研究概要 |
ウシ黄体にオキシトシンレセプター(OTr)の存在すること、また、そのレセプター濃度は黄体中期に最大に達することを明らかにしてきた(Biol.Reprod.,1992)。さらに、黄体で合成分泌されるPGF2αが、黄体のOTr調節因子の一つであることを示唆してきた(Reprod.Fert.Dev.投稿中)。しかし、PGF2αの刺激作用はそれほど強くないことから、より強力な調節因子の存在が考えられる。本年度は、昨年度の継続としてウシ黄体のOTr調節因子を明らかにするために、初期黄体のモデルとして培養顆粒層細胞を用い得るかどうかについて検討した。1.ウシ卵巣の小卵胞(未熟卵胞:直径3-5mm)または大型卵胞(成熟卵胞:発情期)より採取した顆粒層細胞についてオキシトシン(OT)レセプターの親和性と濃度を比較した。その結果、成熟細胞から採取した顆粒層細胞にくらべ、未熟卵胞から採取した顆粒層細胞のほうが親和性、濃度ともに有意に高いことが明らかになった(P<0.01)。2.未熟卵胞より採取した顆粒層細胞を、10%子牛血清を含むDMEM/F-12で培養した。培養開始0、48、72時間後に1.と同様にレセプターの解析を行った。その結果、培養時間の経過とともにOTr濃度は、有意に減少した(P<0.01)が、新和性に有為な変化は認められなかった。3.卵胞より採取した卵丘細胞で囲まれた未熟卵子を、10%FCSを含むTCM-199にOT(0-10nM)を添加して24時間培養した後、卵丘細胞の膨化の程度を比較検討した。膨化の程度を+〜++++に分類して検討したところ、+++以上に膨化した割合は、無添加区と比べOTを1nM以上添加した区において有意に高くなった(P<0.05)。 以上の結果から、ウシ顆粒層細胞のOTr濃度は、卵胞の発達にしたがって減少すること、また、OTは卵子の成熟過程で何らかの影響を及ぼしている可能性が示唆された。
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