研究概要 |
ウシ黄体にオキシトシンレセプター(OTr)の存在すること、さらに、そのレセプター濃度は、黄体中期に最大に達することを明らかにしてきた(Biol.Reprod.,1992)。また、本助成による研究によって、1.黄体で合成分泌されるPGF2αは、パラクラインあるいはオートクライン機構により黄体のOTrを増加させること、さらに、このPGF_2αの作用は、プロテインキナーゼCの活性化を介して発現することを示唆した。(Reprod.FertDev.投稿中)。しかし、PGF2αの刺激作用はそれほど強くないことから、より強力な調節因子の存在が考えられる。そこで、黄体細胞に分化する前の顆粒層細胞のOTr濃度、さらに初期黄体のモデルとして培養顆粒層細胞を用い得るかどうかについて検討した。2.その結果、成熟細胞から採取した顆粒層細胞にくらべ、未熟卵胞から採取した顆粒層細胞のほうが親和性、濃度ともに有意に高いことが明らかになった(P<0.01)。未熟卵胞から採取した顆粒層細胞を培養したところ、培養時間の経過とともにOTr濃度は、有意に(P<0.01)減少したが、親和性に変化は認められなかった。これらのことから、ウシ顆粒層細胞のOTr濃度は、卵胞の発達にしたがって減少すること、そしてOTは卵子の成熟過程で何らかの影響を及ぼしている可能性が示唆された。また、初期黄体のモデルとして培養顆粒層細胞を用いうることが示唆された。今後、培養顆粒層細胞を用いた研究によって、より強力なOTr調節因子を見つけ得る可能性があると考える。3.黄体と子宮のOTr調節機構の違いを検討するためにブタ子宮内膜を用いて検討したところ、初発情前のブタ子宮内膜にOTrの存在することが明らかとなり、その濃度は、細胞内のcAMPレベルを制御する機構によって調節されている可能性が示唆された。
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