屠場由来牛卵巣を実験室まで運び、褐毛和種由来卵巣から採取した卵母細胞を5%牛血清+0.01mgFSHを含むTCM-199培地内に移し、38.5℃、5%CO_2気相条件下で30〜32時間培養したのち、同培養液で7%エタノールで10分感作させ、更に第2極体の放出を阻止するためサイトカラシンD液内で5時間培養して2nの単為生殖卵を作出し、培養の48時間目に4細胞期に達したものを支持細胞として用いた。受精卵は黒毛和種由来の卵母細胞を用い、単為生殖卵と同様にTCM-199培地内で成熟させ、21時間目に精子と受精させて培養3日目に16細胞期に達した時2%プロナーゼで透明帯を融解したた。こうしてバラバラにした16細胞のそれぞれ4個のブラストメア-を4細胞期に達した単為生殖卵の透明帯内に挿入して更に8日間培養した。培養の6日目になって培養した4個中3個が胚盤胞胚に発生したことから、事前に性周期を同調しておいた受卵牛2頭へ非手術的に2個と1個ずつ移植したところ、2個を移植した牛が妊娠し、妊娠267日目に双子を分娩した。血液の診断の結果同一遺伝子を持つクローン牛であることが確認された。妊娠期間は正常のものに比べて2週間程度短かく生後直死であった。胎子の生時体重は27.8kgと31.5kgであり、正常な形態を成していた。産子の細胞分析ではいずれもXYの性染色体で、計60個の正常な数を持っていた。また、これらの牛からは支持細胞として用いた単為生殖卵の褐毛は身体に発現しなかった。この結果から、単為生殖卵は受精卵の支持細胞として有効である可能性は示唆されたが、実用化のためにはもっと例数を重ねて実証しなければならない。
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