研究概要 |
反芻動物の呼気中から排出されるメタンの産生を制御するためのモデルとして,複胃をもち高繊維質飼料で生存できるように改良されたシリアンハムスターを用いて,このハムスターのセルロース分解能について特性を明らかにし,また,ハムスターにおけるメタン産生を確認し,次いでメタン生成とセルロース分解能の関連,メカニズムについても明らかにしようとした。 動物は,アルファルファ飼料給与下で選抜31世代に達したシリアンハムスターを用いて対照の穀類主体市販飼料で維持されているハムスターにも同様の飼料を与えて実験を行った。特に今回は妊娠および泌乳の時期といったエネルギーを多く必要とする時期を選んで(1)基礎代謝量の測定と飼料消化性(2)揮発性脂肪酸の吸収能をin situ下で調べた。同時に(3)血液生化学成分についても調査した。また,(4)動物側のセルロース利用能について検討し,今年度は以下の結果を得た。 (1)アルファルファ飼料条件で選抜されたハムスターは,アルファルファ飼料および穀類主体飼料の両方で代謝体重当たりの乾物摂取量が増加し,特に泌乳の初期には顕著な増加をした。 (2)乾物,粗蛋白質および総繊維の消化率では,穀類主体飼料でも選抜系のハムスターが妊娠,泌乳期に各消化率が高まる傾向にあるがアルファルファ飼料では,より明らかに選抜系の消化率が高まることが認められた。特に,泌乳初期には乾物消化率が9ポイント粗蛋白質が7ポイント総繊維の消化率では15ポイントも高まった。 (3)全身麻酔条件下であらかじめ調製した揮発性脂肪酸(酢酸,プロピオン酸,酪酸の混合)溶液を空の前胃および盲腸内に注入し,1時間後に回収してその濃度差からVFAsの吸収率を測定するとアルファルファ飼料の盲腸の吸収量で選抜系のハムスターが高くなるものの他の区では吸収率および量共に一定の傾向は認められなかった。しかし,前胃よりも盲腸での吸収はpH依存性であることが確認できた。
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