我々はGRの核結合を増大させる核結合促進因子(ASTP)を発見し、精製した。ASTPはGR情報伝達パスウェー上で必須の因子であり、作用機構としてGRと協調してNucleosome構造を変化させている可能性を考えている。本研究は、このASTPの一次構造を解析し、ASTPとGR、ヒストン及びHREの相互作用を分析する事によりGRの遺伝子発現活性化機構の解明を目的としている。ラット肝cDNAライブラリーから抗ASTP抗体を用いてスクリーニングを行ない、クローン化されたASTP-cDNAの塩基配列を解析した。その結果ASTPの全cDNA配列を解析出来た。ASTPのcDNAの全配列は2989bpで、1572bpから成るOpen Reading Frameを含み、524個のアミノ酸から成る蛋白質をコードしていた。予想されるアミノ酸配列は精製ASTPの限定分解により得られた6種類のアモノ酸配列を全て含んでいた。また、その配列にはSV40のT抗原やステロイドホルモン受容体に認められる核移行シグナルに類似した配列が認められた。ASTP-cDNAを動物細胞や大腸菌に導入してASTP蛋白発現系を構築中に、ASTPは蛋白に翻訳後、部分限定分解などの修飾を受けていることが、明らかになった。ウエスタンブロット法で仔細に解析すると、ラット肝細胞中に非常にマイナ-な分子種(ASTD前駆体)を見い出すことが出来た。 更に、ASTPとGRの相互作用を解析する目的でラットGRのcDNAをRT-PCR法を用いてクローニングした。現在、このラットGR蛋白発現系の構築を行っており、得られたリコンビナントGR蛋白を用いた解析を計画中である。
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