EBVのトランスフォーミング遺伝子産物であるLMP蛋白はビンキュリン、srcファミリー・キナーゼなどの細胞性蛋白質と結合することが報告されている。これらの蛋白質は細胞・細胞間あるいは細胞・基質間接着装置の裏打ち構造に存在する。特にsrcファミリー・キナーゼは細胞接着により生ずるシグナルを核に伝達する可能性があり、LMP蛋白がsrcファミリー・キナーゼを介するシグナル伝達系を解析する道具になりうるかどうかを検討した。 まず、srcによるシグナルで制御される遺伝子として92-kDa type IV collagenase遺伝子があることを見いだした。その発現誘導機構の解析をプロモーター領域を単離して行なった。その結果、本遺伝子の発現は炎症性サイトカインとv-Srcに代表されるシグナルによってそれぞれ独立に制御されることが明かとなった。v-Srcシグナルによる発現誘導には転写因子AP-1の結合部位とRCE(Rb control element)が必須であった。細胞によってv-Srcシグナルに応答するかどうかはRCEに結合する核因子が存在するか否かによっていることが明かとなった。 LMPの発現プラスミドを構築し、トランスフェクションによって蛋白質の発現が見られることを確認した。そこで、LMPの発現がv-Srcシグナルと同様のシスエレメントを介して92-kDa type IV collagenase遺伝子プロモーター活性に及ぼすかどうかを様々な細胞を用いてトランジエントトランスフェクション法にて検討中である。未だ予備的な結果で結論を出すまでにはいたっていないが、さらに実験を継続することにより答えが得られそうなところまで来ている。
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