研究概要 |
ラット、マウスなどの研究で肝臓特異に発現する転写因子(trans-acting factor、核蛋白)はHNF-1α,HNF-1β,HNF-3α,HNF-3β,HNF-3γ,HNF-4,HNF-5が知られており、我々はひとでHNF-1α,HNF-1β,HNF-4のcDNAを得ることができた。HNF-3(transthyretin enhancer binding protein)についてはひとでの存在の報告は未だなく、cDNAクローンを得ることはできなかった。HNF-5について我々は、ひとalbumin,α-fetoproteinのenhancerにbinding siteがあることを突き止めたが(Hayashi,y.,et al.J.Biol.Chem.1992 267 14580-5)、binding shift assay,foot printのdataからは単一の核蛋白とは、考え難くcDNAクローンは得られていない。肝癌手術材料組織を使ったnorthern blottingによるHNF-1αのmRNA発現の検索でひと胎児、高分化肝癌では高い発現をみるが中ないし低分化肝癌では発現が減少する。HNF-1α,HNF-1βのmRNA発現の変化が肝癌の組織分化度、予後因子に成りえると考え発現の変化を簡易に検索しうるcompetitive RT-PCR法を考案した。 competitive RT-PCR法の結果と臨床的、生物学的な癌の性格の解析は次年度おこなわれる。また胃癌の一部に肝細胞類似の組織型を示し生物学的に悪性度が強くα-fetoproteinを分泌するものがある。この核蛋白の発現を検索し、HNF-1α,HNF-1β、HNF-4の発現が強く、重要な働きをしていることを示唆する所見を得た。ただ一部の胃癌でHNF-1α,HNF-1βが高度に発現しているが、α-fetoproteinの産生をみないものがあり、胃癌の様々な培養株を使って、個々の転写因子について詳細な検討を行っている。
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