私達はガングリオシド糖鎖の合成の基幹部に働く、GM2/GD2合成酵素遺伝子のcDNAを導入したトランスフェクタントを用いて、改変された糖鎖の変異と細胞増殖動態につき解析を行い以下の様な結果を得た。 1.本遺伝子導入株でGM2を新たに発現するB16メラノーマは、GM2を発現しない親株およびneo耐性株に比べ、増殖が早期に低下する。即ち^3H-チミジンの取り込みでは、24時間後と48時間後にはほとんど差が見られない。 2.しかし、マウスに皮下接種した時の腫瘍形成速度においては、GM2発現株、非発現株の間にはほとんど差が見られなかった。 3.これらのトランスフェクタントの、細胞外基質に対する接着度を、クロミウム標識した細胞の接着により検討したところ、GM2発現株では、コラーゲン(IV型)、フィブロネクチン、ラミニンいずれに対してもより高い接着率を示し、GM2発現が細胞接着を促進することが示唆された。 4.以上の接着実験の際、抗GM2抗体を反応させてから接着能を見たところ、GM2発現株の接着が20〜40%阻害されたことより、確かにGM2が接着に直接関与していることが示唆された。 5.GM2を発現するトランスフェクタントと非発現細胞株よりRNAを抽出し、myc遺伝子の発現を検討したところ、GM2発現細胞で明らかに、より高い発現を認めた。 以上より、新たなGM2の発現が、細胞の増殖速度や接着に少なからぬ影響を与えるのみならず、細胞内の増殖関連遺伝子の発現や機能に対しても変化を及ぼしていると考えられ、その作用機構に着き検討中である。
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