研究概要 |
マラリア原虫の侵入型虫体の先端部に局在する細胞内小器官を虫体から分離精製し、その中に含まれる物質に対する単クローン抗体を作成することによって、先端部小器官に含まれる物質の性状を明らかにすることを目的として本研究を実施した。その結果、オ-キネートの虫体表面の分子量22kDa,28kDaの蛋白の他に,赤血球への侵入型であるメロゾイトのロプトリ-を特異的に認識する多数の単クローン抗体を得ることが出来た。材料にはネズミマラリア(Plasmodium yoelii)を用いた。P.yoelii17XL感染ICRマウスから採血した感染赤血球を培養して得たオ-キネートを含む感染赤血球から,45%Percollを用いてオ-キネートおよび分裂体を分取した。この虫体を加圧細胞破砕器(PARR社)によって破砕した後,蔗糖密度勾配遠心法によって先端部小器官を含む分画を得た。この分画を用いてBALB/cマウスを免疫し、定法に従って単クローン抗体を作成した。作成したハイブリドーマのうち6クローンから得た単クローン抗体が,間接蛍光抗体法で分裂体に点状の強い蛍光反応を示した。共焦点レーザー顕微鏡および免疫電子顕微鏡によって,これらの単クローン抗体がメロゾイトのロプトリ-に局在する蛋白を認識することが明らかになった。ウエスタンブロッテングでは、単クローン抗体が分子量140kDaの蛋白のペプチドエピトープを認識することが示された。これらの単クローン抗体でBALB/cマウスを受動免疫した後にP.yoeliiを感染させたが,感染阻止は認められなかった。今後,赤血球ステージ虫体およびオ-キネートのcDNAライブラリーを作成し,ポリクローナル抗体および単クローン抗体を用いて,このライブラリーを免疫スクリーニングし,メロゾイ-トの140kD蛋白およびオ-キネート表面の22kDa,28kDa蛋白の遺伝子解析を行う予定である。
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