H.pylori細胞傷害毒素の精製、性状解析と胃十二指腸疾患発症機作に関する研究

1994 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 05807022
• 研究機関: 杏林大学
• 研究代表者: 神谷 茂 杏林大学, 医学部, 教授 (10177587)
• 研究分担者: 山口 博之 杏林大学, 医学部, 助手 (40221650)
• キーワード: Helicobacter pylori / 細胞傷害毒素 / 消化性潰瘍 / 細胞付着性 / フローサイトメーター / 赤血球凝集活性

研究概要

Helicobacter pyloriサイトトキシン(CT)産生株TK1029を用いて、大量培養後の培養上清よりCTの精製を試みた。50%硫安塩析後、セファクリルS300ゲル濾過、フェニルスーパーロース疎水結合カラム、QセファロースFFおよびモノQ陰イオン交換カラム等により高力価の精製CTを得ることは、出来なかった。無血清培地の考案、透析膜培養、高力価CT産生菌株の検索等試みてきたが、現在のところ有効な方法が確立されていない。
H.pylori 15菌株を用いて細胞への付着性をフローサイトメーターにより解析した。被検15菌株のMKN45、KATO III(いずれもヒト胃癌由来)およびInt-407(ヒト小腸上皮由来)への平均付着率はそれぞれ76.6、42.7、15.1%であり、H.pyloriはMKN45細胞に対して最も高い付着性を有することが示された。またH.pyloriは小腸由来細胞よりも胃上皮由来細胞に対して強い親和性を持つことも明らかにされた。fetuinのH.pyloriの付着性に対する抑制効果は全く認められなかった。
赤血球凝集(HA)試験の結果、被検55菌株のうちモルモット、ウサギ、ヒトO型、ヒツジ、ニワトリ、ウマ、ウシ赤血球を凝集させる菌株数は各々53(96%)、52(95%)、47(85%)、47(85%)、33(60%)、28(51%)、25(45%)株であった。また平均HA価は、モルモット赤血球を用いた場合2^<5.6>の最高値を示した。15菌株の細胞付着性とHA活性を比較した結果、MKN45細胞への高い付着性を示す菌株のHA活性は高値を示す傾向(ヒツジおよびヒト赤血球)が認められた。一方、毒素産生性と細胞付着性およびHA活性との間に明確な関連性は認められなかった。

研究成果

• [文献書誌] Kamiya S,et al: "Evaluation of rapid urese test for detection of Helicobacter pylori in gastric biopsy specimens." Eur J Epidemiol. 9. 450-452 (1993)
• [文献書誌] Kamiya S,et al: "Characteristics of vacuolating toxin produced by Helicobacter pylori." Eur J Gastroenterol Hepatol. 6. S23-27 (1994)
• [文献書誌] Yamamoto-Osaki T,et al: "Adherence of Helicobacter pylori to cultured human gastric carcinoma cells." Eur J Gastroenterol Hepatol. (in press). (1995)
• [文献書誌] 神谷 茂: "Helicobacter pyloriの生物学的特性." 医学のあゆみ. 169. 255-258 (1994)
• [文献書誌] 白井孝之,他: "胃潰瘍および十二指腸潰瘍におけるHPの位置づけ." 臨床消化器内科. 8. 541-547 (1993)
• [文献書誌] 高木敦司,他: "PCR法を用いたHelicobacter pylori感染診断に関する臨床的検討." 消化器病誌. 91. 1277-1282 (1994)
• [文献書誌] 白井孝之,他: "Helicobacter pylori(HP)の存在診断におけるbiopsy ureasetest(BUT)の有用性“Helicabacter pylorによる胃十二指腸粘膜障害の臨床的意義"" トプコ出版部, 127 (1993)