研究概要 |
Helicobacter pylori感染と胃十二指腸疾患発症との関連性を調べるために、胃十二指腸疾患患者より本菌の分離を試みた。胃潰瘍、十二指腸潰瘍、萎縮性胃炎患者からの本菌検出率は各々83、85、75%であり、急性表層性胃炎(25%)、粘膜下腫瘍(33%)患者のそれらに比べて高率であった。胃生検材料のウレアーゼテストの培養法に対する感度、特異性、陽性および陰性予知率は各々76、85、91、63%であり、本テストは迅速スクリーニングテストとして有用であることが判明した。定量培養の結果、1生検材料あたり5,000-1,000CFUのH.pyloriが存在するとウレアーゼテストが陽性となることが示唆された。 H.pylori の約半数の菌株は培養細胞の空胞化を引き起こす細胞障害毒素 cytotoxin(CT)を産生する。CTは70℃で易熱性な分子量2万以上の蛋白であることが明らかにされた。50%硫安塩析後、セファクリルS300ゲル濾過、フェニルスーパーロース疎水結合カラム、Qセファロース FFおよびモノQ陰イオン交換カラム等によりCTの高度精製を試みたが成功に到らなかった。H.pylori 33菌株のCT産生性を検討した。ウサギ腎(RK13)、ヒト羊膜上皮(FL)、サル腎(Vero)、ハムスター腎(BHK-21)、ヒト子宮癌(HeLa)細胞を指示細胞とした場合のCT検出率は各々73、61、27、27、21%であり、CT検出細胞としてRK-13細胞が優れていることが明らかとなった。 H.pylori 15菌株のMKN45、KATO III(いずれもヒト胃癌由来)およびInt-407(ヒト小腸上皮由来)細胞への付着性をフローサイトメーターにより解析した。被検15菌株のMKN45、KATO III、Int-407への平均付着率はそれぞれ76.6、42.7、15.1%であり、H.pyloriは、小腸由来細胞よりも胃上皮由来細胞に対して強い親和性を有し、特にMKN45細胞に対して強い付着性をもつことが示された。CT産生性と付着率の間に有意な相関は認められなかった。
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