胎生14日胎児肝臓および成体骨髄よりThy-1^<10> Lineage marker-Sca-1^+ c-kit^+である造血幹細胞をfluorescence activated cell sorterを用いて単離し、limiting dilution条件下でデオキシグアノシン処理した胎児胸腺とhanging drop培養及び器官培養し、T細胞に分化させた。幹細胞の胸腺への再構成の頻度は約30細胞に1回であった。胸腺1個あたり幹細胞3ないし10細胞の割合で再構成させた8個の胸腺の細胞からmRNAを抽出し、V_<γ4>、V_<γ2>とJ_<γ1>プライマーおよびV_<β8>とC_βプライマーを用い、プログラムテンプコントロールシステムによりRT-PCRで増幅した。得られたPCR産物をクローニングしその塩基配列を約30個ずつ調べた。V_<γ4>配列に関して、N配列を持つ割合が0%から79%の巾で幹細胞が連続的に分布した(平均36%)。この内、N配列挿入が0-25%の低レベルのものは4個、25-70%の中レベルが3個、70%以上の高レベルのものが1個であった。一方、成体骨髄の幹細胞では85%と高レベルを示した。この結果は、幹細胞の胎児型から成体型への変化が連続的に起こっており、2つの型が細胞系列としてつながっていることを示している。また、N配列挿入能に関して幹細胞集団が不均一であることを示している。さらに、V_<γ2>とV_<β8>も解析した5個の幹細胞については、N配列挿入が3種類のV遺伝子の種類によらず一様に低レベルか高レベルになる傾向が認められた。この結果は、N配列挿入がT細胞レセプターの種類により決定されるのではなく、幹細胞における段階ですでにプログラミングされていることを示している。
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