高分解能核磁気共鳴スペクトル法の医学への応用については、急速に装置が普及してきたため、広範囲に検討をされている分野であるが、予防医学の方面では現在の所報告はほとんど見あたらない。その理由の一つに感度の問題がある。高磁場の採用により感度は飛躍的に向上してきたが、微量代謝成分を定量出来るほどには達していない。第二にシグナルの帰属の問題がある。装置が汎用化したとはいっても微量成分の帰属には高度な知識と技術を必要とする。これらの問題点を解決するための方策を今回は追求してきた。 NMRのピークの帰属をする方法の一つに、常磁性のプローブを用いる方法がある。2価のイオンとして影響が局在して観測できるプローブとしてNi(II)を用いた。また、特定の機能をもつ常磁性プローブとしてCr(III)ATPを用いた。これによりピルビン酸キナーゼのヒスチジン残基のうち2価イオンの結合部位と、ATP結合部位の近傍に存在するものを特定することが出来た。さらに、緩和時間T_1を測定することにより、ヒスチジンC-2プロトンとの距離を計算することができた。
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