研究概要 |
骨粗鬆症のような退行性変性疾患発症要因の究明には前向き(コホート)研究が不可欠となる。しかし一疾患のみの発症要因調査のためにコホートを設定することは受け入れ難い。和歌山県美山村(人口2,639人、65歳人口割合23.1%)では総合的な健康管理を実施することによりコホート設定が可能となった。住民台帳をもとに美山村の40-79歳の全住民1,543人(男716人、女827人)を対象に既往歴、食習慣、運動習慣、飲酒、喫煙、職歴、ストレス、精神心理、婚姻歴など123項目におよぶ「健康と生活習慣に関する質問調査票」の留置調査を実施し、1,369人(男619人、女750人)から回答を得ることができた。 美山村では毎年総合健診として循環器、がん検診を実施しているが採取した余剰血清で骨粗鬆症関連の骨代謝マーカーを測定している。 更に本コホートの40、50、60、70歳代の各年代別に男50人、女50人、計400人を抽出し、骨密度計(DEXA)を用いて腰椎(L_2-L_4)と大腿骨頸部の骨密度を測定した。「健康と生活習慣に関する質問調査項目」、総合健診の各種データに骨密度測定結果をレコードリンケージさせ今後追跡調査を継続的に実施できるようなシステムを構築することができた。初回の断面調査の成績ではあるが、骨密度は加齢とともに低下し、女性は男性に比べて低いこと、閉経が骨密度低下に影響を与えること、運動習慣は高齢女性の骨密度維持に有効であることが認められた。骨形成マーカー(アルカリフォスターゼ、オステオカルシン)、骨吸収マーカー(尿中ピリジノリン、デオキシピリジノリン)ともに50歳代の女性で著名な変化がみられた。
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