研究概要 |
萎縮性胃炎の罹患にHelicobacter pylori感染が関連しているかどうかを明らかにするため、症例対照研究を行った.症例群は,1995年に福岡県O町の基本健康診査を受診した者の中で,1991年,1992年の血清ペプシノーゲン値により萎縮性胃炎と判定されず,かつ1995年の測定で初めて萎縮性胃炎と判定された39名である.対照群は2回の検査で萎縮性胃炎と判定されなかった164名である.萎縮性胃炎の判定は,血清ペプシノーゲンI(PGI)と血清ペプシノーゲンII(PGII)の比PGI/PGIIが3未満とした.萎縮性胃炎罹患へのHelicobacter pylori感染のリスクをCox proportional hazards modelを用いて解析した.Helicobacter pylori感染の萎縮性胃炎罹患へのオッズ比は4.0(95%信頼区間:1.69-9.65)と有意な関連がみられた.そこで,Helicobacter pylori感染の萎縮性胃炎罹患への影響を年齢別、性別にみると,65歳未満では、オッズ比が5.5(95%信頼区間:1.61-18.52)と有意なリスクの上昇がみられた.しかし、65歳以上ではオッズ比が2.9(95%信頼区間:0.84-10.03)とリスクの高まりがみられたが、有意ではなかった.性別では、男性においてはオッズ比が1.3(95%信頼区間:0.32-5.17)であり有意な関連はみられなかったが、女性ではオッズ比が6.9(95%信頼区間:2.10-22.88)と有意なリスクの上昇を示した.以上から,Helicobacter pylori感染は萎縮性胃炎罹患へのリスク要因となり,その影響が男女で異なるなることが示唆された.
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