研究概要 |
Rhシステムの分子遺伝子学的解析を進め、いくつかの新知見が得られた。 1.Rhポリペプチド-cDNAのクローニング 2種類のRhポリペプチドをコードするcDNA(RhPI,RhPII)をクローニングした。RhPIcDNAは、Dherif-Zaharらの報告したRhポリペプチド-cDNAと比較し1塩基置換を有し、一方RhRII cDNAには41塩基置換を認めた。RhPI,RhPII cDNAクローンはいずれも1251塩基のオープンリーディングフレームを有し、この2つのクローンにコードされている417個のアミノ酸からなるポリペプチドには、疎水性解析の結果、12個の膜貫通ドメインの存在が推測された。 2.各種Rhシステム表現型における遺伝子解析 RhPI,RhPII cDNAクローンは、RhD陽性者のみならず陰性者にも検出され、RhD以外の抗原をコードしていると考えられた。これらのクローンは、Rhnull、-D-などのドナーにおいても見いだされた。以上の結果は、Rhシステムの3遺伝子説を強く支持し、さらにRh抗原の細胞膜上へ発現には、何らかの結合分子の存在を予測させた。 Rhシステムの各種表現型におけるRhPIならびにRhPII cDNAを解析し、いずれにも複数のvariantが同定され、各抗原系との対応を検討した結果、RhPI cDNAはRhE/e抗原をコードしていると推測された。 3.Rh遺伝子のスプライシング機構 Rh遺伝子のスプライシング機構の系統的解析を試み、RhPI,RhPII mRNAに多数のスプライシング・アイソフォームを分離し、Rhシステムの複雑な抗原系を解明する糸口を見いだした。 4.白血球系細胞におけるRh遺伝子の発現 白血系球細胞におけるRh遺伝子の発現を検討し、RhポリペプチドはmRNAレベルでは、骨髄球系、単球系、T細胞系、B細胞系にも存在するとを見いだした。
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