研究概要 |
HIVと腸管上皮間リンパ球(IEL)とのinteractionを明らかとする事はAIDS患者におけるenteropathyの病因を追究するのみならず、HIVに対する生体の免疫防御機構およびAIDS進展による防御機構の破壊を検討するうえで重要であると考えられる。今回の研究ではAIDS患者の病変部腸管粘膜より分離した局所のT細胞IELからHIVの構成蛋白gagおよびenvに対するcytotoxic T細胞(CTL)クローンを樹立し,phenotypeおよびfunctionを明らかとすることにより、HIV specific CTLを誘導する新しい治療法の開発を目的とした。平成5年度の研究ではまず準備段階として、健常部および炎症性腸疾患患者の病変部より分離した局所のIELからT細胞株およびT細胞クローンの樹立を試み,IL‐2,IL‐4、抗CD3抗体、allogeneic PBLの刺激により、ヒトIEL由来T細胞株を得た。各株のcharacterizationにより、炎症局所においてはCD3+CD4+TcRVbeta5.2/5.3+というIEL細胞群が選択的に増加し、TcRを介したcytotoxic activityとinterferon‐gammaの産生増加が認められた。しかもこの細胞群は腸内細菌由来superantigenであるstaphylococcal enterotoxinにより増殖が認められ、腸管内抗原刺激に対応するIELの重要性を明らかとした。次に、Norman Letvin(Harvard Medical School)のラボと協力して,AIDS患者病変部大腸粘膜よりHIVの構成蛋白に対するcytotoxic T細胞(CTL)クローンを樹立を試みた。bulk cultureではIEL中にCTL活性を認めたが、クローン化の途中で活性の消失が認められた。これは、クローン化を非特異的刺激により行ったためと考えられ、現在、HIVの構成蛋白peptideによる持続的刺激およびIL‐12の併用により、再クローン化を行っている。
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