研究概要 |
エイズは全世界で飛躍的に患者数が増えており、新しい治療法の開発は急務といえる。我々はrecombinant soluble human CD4(rsCD4)を生体内に投与することにより、抗エイズvirus作用を持つ抗CD4自己抗体の誘導に成功し,その臨床的有効性を証明してきた(Nature337:267,1989;J Virol 64:656,1990; Proc Natl Acad Sci 88:120,1991;Proc Natl Acad Sci 88:4616,1991;J Virol 65:3344,1991)。今回の研究では、この新しいエイズ治療法の抗AIDS virus作用機序を解明するため、rsCD4免疫によりCD4のV3/V4 domainを認識するモノクローナル抗体を作製を試みた。作製されたV3/V4 domain specificな抗体の中で5D4および7C2はヒトT細胞へのHIV-1 IIIb感染を完全に抑制した。しかも、5D4および7C2はCD4-gp120の結合およびsyncytium形成は抑制せず,認識細胞の抗CD3抗体によるactivationを抑制するという特異なcharacterを持っていた。これらの抗体は既知のHIV結合を阻害する抗CD4抗体とは異なる機序でHIVのT細胞への感染を抑制すると考えられる。従って、我々がrsCD4免疫により生体に誘導し得たCD4のV3/V4 domainを認識する抗CD4自己抗体も同様の機序でエイズvirus感染をを抑制する可能性が考えられた。更に、本抗体の存在によりHIVのCD4陽性細胞侵入にはCD4のV1domainでの結合のみならず,V3/V4domainが役割をはたしている事が明らかとなり、本研究はHIVの病態生理の解明に関しても有用な研究であった。
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