研究概要 |
当初の研究目的は、T細胞サブセット(Th2)の受身移入によって,喘息の病態が形成されるか否かを明らかにすることにあった.しかしながら、T細胞の維持等に問題が生じたため、この研究の基礎となるべき研究を行った。すなわち,研究の目的として,アレルギー性炎症の中心的細胞である好酸球が肺内に抗原特異的に増加するようなマウスのモデルを作成することとした。Th2タイプの反応を起こしやすい系統と考えられるBALB/cマウスを用い,抗原には卵白アルブミン(OVA)を用い,喘息モデルとして頻用されるモルモットのモデル作成を参考として以下のプロトコールで行った。感作はアレルギー反応の誘発に適していると考えられるアルム[Al(OH)_3]をアジュバントとして10mgのOVAとともに復腔内に免疫した。抗原チャレンジにはOVAを生食にて50mg/mlとした溶解液を、Devilbiss646吸入器で(5L/Amin圧縮空気)20分間吸入させた。種々の検討の結果、感作は2週間隔で3階、チャレンジは6日間連日行うことによって、気管支肺胞洗浄液(BALF)(全肺0.8mlx5回)中に70%の好酸球増多を起こすことに成功した。また、このモデルを用いてTxA2の阻害が好酸球に及ぼす影響を検討した。その結果、TxA2合成阻害薬(OKY-046)およびレセプター拮抗薬(S-1452)の投与は用量依存性の好酸球減少効果のあることを明らかにした。さらにこの減少効果は、サイトカインの産生抑制によるものであることが明らかとなった。このようなモデルは現在あまり存在せず,アスカリス抗原の吸入によるものが報告されているに過ぎない。こうしたモデルの開発は,好酸球増多の機序におけるT細胞やサイトカインの役割を検討したり,また抗喘息薬などの好酸球への効果を検討するのに適したものとなると考えられる。
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