研究概要 |
骨格筋細胞膜と細胞外基質の抗体標識による三次元超微形態研究を開始するにあたり、抗体をα、βジストログリカン、及びラミニンは種々のサブユニットがあるが骨格筋に特異的なサブユニットMであるメロシンに絞って研究を実施した。α、βジストログリカンはNature 355: 696-702,1992にアミノ酸の全シークエンスが発表されているので、ここからαジストログリカンはアミノ酸No.30-44,102-115,300-316の3つ、βジストログリカンはC端アミノ酸15残基のペプチドを合成し、羊とウサギに免役して抗体を得た。いずれも抗体価は充分に上昇したが、イムノブロットによる検討ではβジストログリカンは良好な結果を得たもののαジストログリカンでは複数のバンドがみられ、アフィニティー精製等をしないと使用困難と判明した。従って本研究ではβジストログリカンの免疫透過電顕の研究をし、骨格筋細胞膜の内側にそれに随伴して局在が認められた。次にラミニンのサブユニットMすなわちメロシンは単クローン抗体が市販されているが、これはヒト骨格筋に特異的でマウス骨格筋のメロシンは認識しない。このメロシンを使用した金粒子標識免疫電顕では骨格筋線維の基底膜の最内層で筋細胞膜より約30〜50nmの距離の部位に金粒子の局在があることが判明した。骨格筋のフリーズエッチレプリカの電顕観察では筋細胞膜の表面に柱状に突出した太さ約5〜10nmの細胞骨格、これと連なる網状構造物とその網状物に混在し太さ約30nmのコラーゲンと考えられる構造物などが認められた。メロシン抗体標識によるフリーズエッチレプリカの観察ではメロシンを標識する金粒子が、筋細胞膜表面に細胞膜から突出した柱状細胞骨格と連続する網状構造物とに局在しているのが認められた。本研究ではαジストログリカンの局在を知ることを最優先したため、抗体の作製とその性状の評価に意外な時間を要した。幸いメロシンはαジストログリカンのレセプターであることが判明したので(Sunada Y, et al. J Biol Chem 269: 13729-13732,1994)、このメロシンの細胞膜側はαジストログリカンである可能性が大きく、有意義な結果が得られている。
|