インスリン依存性糖尿病(以下IDDM)の発生機序に関して、遺伝、感染、免疫異常、環境因子など様々な説があるが、免疫学的機構が関与することは一般に認められている。 今回、我々は、リンパ球増殖、リンパ球活性化に重要な役割を担うインターロイキン2(以下IL-2)システムの異常について明らかにした。その結果、IDDMでは、CD4陽性のT細胞のうち、T-helper 1細胞のIL-2産生能が選択的に低下しており、T-helper 2細胞のIL-4産生能は正常であった。しかし、このIL-2システムの異常はIDDMの原因なのか、結果を見ているかは明らかでない。そこでIDDMの本能と考えられる膵ラ氏島のβ細胞の破壊の際に見られるリンパ球、特にCD4陽性T細胞の浸潤の機序について検討した。CD4陽性T細胞は、MHCクラスII分子を認識するが、IDDMのβ細胞では通常表出しないクラスIIが表出している。糖尿病自然発症(NOD)マウスおよびコントロールマウスのβ細胞をウイルスでトランスフォームした細胞株を用いて、IFN-γ、PMAを組み合わせた刺激を加えると、NODマウスの細胞株が、クラス2(マウスではIa)抗原が、表出しやすいことが判明した。 この機序について、細胞内酵素(特にPoly(ADP-ribose)合成酵素)や、細胞内情報伝達を中心に、MHCクラスII発現に関するIDDMの異常を解明しつつある。
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