研究概要 |
中心・側頭部に棘波をもつ良性小児てんかん(Benign childhood epilepsy with centrotemporal spike,BCECS)は、脳に解剖学的病変はないが、中心・側頭部、ローランド溝領域に特徴的な突発波、すなわちローランド発射(Rolandic discharges;RD)を有する、小児期発病の良性てんかんの一型である。BCECSの発作メカニズムの解明のため、RDの電流発生源の位置、およびその経時的な変化を、脳磁図(MEG)を用い検討した。 対象は、10歳の男児1例、および女児2例のBCECSの3例である。脳磁図はBiomagnetic Technologies,Inc.社製37チャンネルMEG、Magnesを使用した。突発波電流源の位置推定には球モデルを用い、単一双極子を仮定し解析した。それぞれ5個以上のRDを選択し、陰性鋭波とこれに引き続く陽性波の電流発生源の位置を2msec毎に推定し双電子として表示した。電流発生源の表示は、患者の3次元的な頭蓋形状、および同時期に撮像したMRI上に表示した。 陰性鋭波では前頭部に陽極、高頭部に陰極を有する双極子がローランド溝の限局した位置に、同一方向にそろって出現した。一方、陽性波の双極子は、陰性鋭波の近傍に、ほぼ逆向きの極性を有する双極子として出現した。しかし、出現の位置と極制は陰性鋭波ほど一定していなかった。位置推定の信頼性を示すcorrelationも陰性鋭波より劣っていた。 RDの陰性鋭波と、これに引き続く陽性波の詳細な検討が、RDの発生メカニズム、ひいてはBCECSの発病の解明に寄与すると考えられた。
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