研究概要 |
平成6年度の研究は特に心房中隔欠損(ASD)閉鎖術に向けられた.経カテーテルASD閉鎖術は,すでに幾つかの方法が発表されている.いずれの方法も傘を開くように広げた円板からなる閉鎖栓で,心房中隔を挟んで欠損孔を閉鎖するものである.しかし,いずれも欠損孔径の2倍以上の径の円板を使用しなければ閉鎖栓が脱落する危険があることが経験的に知られており,これらの方法で閉鎖できる欠損孔は比較的小さなものに限られる.このような制限が何に由来するかを解明することが必要と思われた.そこでまずASD孔の生体内での形状を描出するために,われわれが昨年度に開発した心室中隔欠損(VSD)孔を描出するための心腔内超音波断層画像三次元再構築法(ICUS・3D)をASD用に改良した.VSDの場合よりも超音波探触子から離れた位置にあるASDを描出するために,VSDで使用された20MHz探触子よりも診断深度の大きな10MHz探触子が新たに開発された.この探触子によりASDの生体内での形状が初めて描出され,成果は平成6年7月の第30回日本小児循環器学会総会ならびに同年11月の日本超音波医学会第64回研究発表会で報告された.さらに心電図同期を取ることで,心収縮の全時相にわたるASD孔の動画像を得ることが試みられた.現時点では,かなり繁雑な手順と時間を要するものの,その画像からASD孔が心周期とともにダイナミックに形状を変化させ,欠損孔面積は150%以上も変化することがあることが分かった.これでは傘型の閉鎖栓が容易に脱落することがよく理解される.この成果は,平成7年3月のAmerican College of Cardiology第44回学術集会で発表された. この新知見に基づき,昨年度に我々が特許出願した経カテーテルASD閉鎖術式は改良され,新たな特許出願が行われた.今後は,ASDのICUS・3Dのための機器とコンピュータ・プログラムの改良による実時間性の向上により,本方がASDの経カテーテル微細閉鎖手術中のモニターとして使用できるように改良を加えるとともに,心周期とともにダイナミックに形状を変化させるASD孔に対応できるような術式を開発して行くこととなる.
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