VX2癌を移植した家兎に対して、経カテーテル的に腫瘍血管に対して温熱生食の動注(血管内温熱療法)を行った結果、以上のような新知見が得られた。 1.腫瘍温度の上昇について 腫瘍中心部は43℃まで温度が上昇した。腫瘍辺縁部、周囲正常組織はそれぞれ40℃・39℃まで温度が上昇した。腫瘍部、とくに中心部の特異的な温度上昇がみられた。 2.腫瘍の大きさの変化について 1週間の間隔をおいて2回の血管内温熱療法を行い、さらに2週間後まで血管造影にて腫瘍の大きさを評価したところ、腫瘍の直径は治療前の70±20%まで縮小していた。一方、Contwl群においては130±20%まで増大していた。 3.血管内温熱療法後の腫瘍および腫瘍血管の組織学的変化について viable Cellが多い腫瘍辺縁部では、Contwl群に対して有意に懐死が増強していた。Viable Cellが少ない腫瘍中心部では有意差はないもののContwl群に比して懐死が増強していた。また、温熱療法施行群では、主に腫瘍辺縁部に分布する腫瘍血管に内膜剥離、血柱形成などの強い障害がみられた。なお、周囲正常組織ならびに正常大腿動脈には明らかな障害はみられなかった。 血管内温熱療法は、腫瘍細胞に対する直接温熱効果のみならず、腫瘍血管に対する障害効果によっても抗腫瘍効果を発揮するものと思われた。同療法は、従来の経皮的温熱療法では十分な効果が得られなかった深部のHyperwasaularな腫瘍に対しても有効な治療として期待できるのではないかと思われた。
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