糖尿病ラットに、生体内では合成されない外因性の植物ステロールの負荷を行い、糖尿病動物では外因性ステロール濃度の増加が認められることを明らかとした。この植物ステロールは体内では合成されないことから、血中濃度の増加は、食事性のものである。さらに、Pair-feedingおよび、Clearance実験より、この病態に吸収能の亢進が寄与する可能性を示した(尾本、日高他、糖尿病1994印刷中)。さらに、これらの植物ステロール濃度の増加は、腸管上皮の生化学的指標であるヘパリン負荷後のジアミン酸化酵素活性とよく相関していた。しかし、コレステロール生合成を食事性に抑制した条件では腸管の重量、面積など形態学的指標とは必ずしも相関せず、コレステロール合成経路またはイソプレノイド合成経路が小腸上皮の増殖に関与するとする我々の作業仮説の妥当性が示唆された。 細胞を用いた実験としては、Caco-2細胞をTranswell上に培養し、腸管側、血管側を持つモデル実験系において、血管側よりのコレステロールの吸収調節が認められた。この時、吸収の律速酵素と考えられているAcyl Co-A:Cholesterol Acyl transferase(ACAT)によるエステル化以降の段階にも調節機構が存在することを明らかにした。現在、これらの機構とイソプレノイド代謝との関連について検討を行っている。 さらに、これらの研究の途上に極めて稀な遺伝的ステロール吸収異常をもつシトステロール血症の新たな1家系を発見した。この家系は、発疹性の黄色腫を認めた世界初の症例を含んでいる。本邦では6家系10人の患者が確認されたことになり、このうち我々の施設での症例は半数の5例である。
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