実験的糖尿病ラットに、生体内では合成されない外因性の植物ステロールの負荷を行い、糖尿病動物では外因性ステロール濃度の増加が認められることを明らかとした。これらの植物ステロール濃度の増加は、腸管上皮の生化学的指標であるヘパリン負荷後のジアミン酸化酵素活性とよく相関していたのみでなく、形態的指標ともよく相関し、糖尿病では腸管の著明な肥大を認めた。しかし、コレステロールの生合成をコレステロール負荷によって食事性に抑制した条件では、腸管の肥大は著明でなく、小腸上皮の増殖にはイソプレノイド合成経路に依存した機構が存在するものと推測された。 細胞を用いた実験としては、Caco-2細胞をTranswell上に培養し、腸管側、血管側という極性を有するモデル実験系において、インスリンは血管側よりコレステロールの血管側への転送・分泌を抑制した。この時、エステル化亢進のみでは分泌の増加は観察されず、細胞内におけるリポ蛋白のAssembly段階の吸収・分泌機構における重要性が明らかとなった。 発疹性の黄色腫を認めた世界初のシトステロール血症症例を報告した。また、高脂血症患者の血中植物ステロール濃度は、コレステロール合成阻害剤であるHMG-CoA還元酵素阻害剤の投与により低下するものの、コレステロール生合成を亢進させるとされる胆汁酸吸着剤では変化せず、シトステロール血症の病因としては腸管のステロール吸収機構の異常にその原因を求めるべきであると考らえれた。
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